下痢でお悩みの方へ
水分が過剰で形を保てない便が出て、排便回数が増えている状態です。腸の水分吸収力の不足や分泌増加によって起こり、急激に発症して短期間で解消する急性下痢と、3週間以上続く慢性下痢に大きく分けられます。
冷えや暴飲暴食など日常的な原因でも生じますが、感染症や難病指定された炎症性腸疾患、大腸がんなど幅広い大腸疾患に共通した症状でもあります。また、アレルギー症状として下痢を生じることもあります。下痢しやすい場合に、お腹の弱い体質と考えて放置してしまうと危険です。下痢を繰り返す場合は疾患が背景にある可能性が高いので、早めに消化器内科を受診して原因をしっかり確かめましょう。
こんな症状があったら
できるだけ早く受診してください
発熱、吐き気・嘔吐、血便・粘血便が伴う下痢の場合、感染症や難病指定された潰瘍性大腸炎やクローン病などの可能性があり、速やかに消化器内科を受診する必要があります。 嘔吐を伴う下痢は、必要な水分摂取ができなくなって脱水が進行しやすい状態です。
特に子どもや高齢者は脱水の進行が速いので、注意が必要です。なお、脱水が進んで尿量が減ったり尿の色が濃くなったりした場合、腎臓にダメージが及んでおり、放置してしまうと腎不全を起こすこともあります。脱水がさらに進行すると脈が早くなり、血圧低下を起こしてショック状態になり命の危険に繋がります。脱水が疑われる場合には、すぐに受診してください。
日常生活から考えられる原因
発熱がない場合は、食べ過ぎやアルコールの過剰摂取、唐辛子など刺激が強い香辛料の摂り過ぎ、冷えなど、日常的な原因で下痢が起こっている可能性があります。また、疲労や睡眠不足を含むストレスで腸の働きが低下すると下痢をしやすくなります。
食べ過ぎ・アルコールの
過剰摂取・唐辛子など刺激が強い食品の摂り過ぎ
胃酸分泌や消化管の蠕動運動が過剰になって下痢を生じます。唐辛子を過剰に摂取して下痢をするケースもよくあります。
冷え
身体全体の冷えや、冷たいものを摂り過ぎることでも下痢を起こすことがあります。冷えることで血行の悪化が起こり、それによって消化機能が低下し、下痢の症状を起こしています。
ストレス
消化管の機能は自律神経がコントロールしており、心身のストレスで自律神経のバランスが崩れると腸の機能に問題が生じて下痢など便通異常を起こします。
疾患が原因で生じている下痢
細菌やウイルス感染
サルモネラ菌・O-157・ノロウイルスなどによる食中毒、風邪などウイルス感染、コレラや赤痢など、幅広い感染症で下痢の症状を起こします。感染による下痢の場合、市販の下痢止めを服用して病原体や毒素の排出が妨げられ、重症化してしまう可能性があり、注意が必要です。
過敏性腸症候群
腸の運動機能の異常や知覚過敏などによって腹痛や下痢などの便通異常を繰り返す慢性疾患です。主な症状によって、下痢型、便秘型、便秘と下痢を繰り返す交互型があります。
潰瘍性大腸炎・クローン病
腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、下痢や腹痛、血便などの症状を起こします。完治に繋がる治療法がなく難病指定されていますが、炎症を抑える治療を継続することで良好な状態を長く保つことが可能です。若い世代の発症が多く、近年患者数が増加しています。重症化させないためには、早期に消化器内科を受診して正確な診断を受けることが重要です。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんは、サイズが大きくなると下痢や便秘、血便などの症状を起こすことがあります。大腸ポリープは良性でも放置しているとがん化する可能性があり、切除することで将来の大腸がん予防に繋がります。
アレルギー性胃腸炎、
乳糖不耐症
アレルギー性胃腸炎では、アレルゲンとなる飲食物によって下痢、腹痛、嘔吐などの症状を起こします。アレルゲンの食品を避けることで発症を防ぐことができます。乳糖不耐症は牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素が体質的に少なく、牛乳を飲んで下痢や腹痛などを起こします。
下痢を予防するために
食べ過ぎ・飲み過ぎを控える
過食やアルコールの過剰摂取、唐辛子の食べ過ぎは急性下痢の原因の大半を占めています。適量を守って、下痢にならないようにしましょう。
ストレス対策
腸の働きに影響する自律神経のバランスを整えるために、睡眠や休息を十分にとりましょう。また、熱中できる趣味やスポーツを楽しむ時間を作る、毎日バスタブに浸かって芯まで温まる、寝室や浴室などのパーソナルスペースをリラックスできる空間にするなど、ストレスを上手に解消するようにしてください。
節煙・禁煙
タバコに含まれるニコチンには、腸の蠕動運動を促進する効果があり、加えて血管を収縮させますので腸管への血流も不足してしまい、下痢を起こしやすくします。ちょっとしたことで下痢をする場合は、節煙や禁煙を心がけてください。
定期的な大腸カメラ検査
放置すると大腸がんの原因になる前がん病変の大腸ポリープは、サイズが大きくなると下痢などの症状を起こすことがありますが、サイズが小さいと自覚症状を起こすことはほとんどありません。大腸カメラ検査では小さいポリープや微細な大腸がんの発見も可能であり、前がん病変の大腸ポリープは発見したその場で切除して将来の大腸がん予防が可能です。大腸カメラ検査は、大腸がんの予防や早期発見が可能な唯一の検査であり、定期的に検査を受けることが最も確実な大腸がん予防になります。