大腸ポリープとは
大腸ポリープの多くは粘膜が盛り上がったできもので、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられます。大腸ポリープのほとんどを占めるのは腫瘍性ポリープの腺腫です。腺腫は良性腫瘍ですが時間をかけてがん化する可能性があり、がん化する前に切除することで将来の大腸がん予防になります。また、それ以外の大腸ポリープでもサイズやできた部位によってはがん化リスクや出血などにより切除が必要になるケースがあります。多くの大腸ポリープはイボ状の盛り上がりやキノコのような形状をしていますが、平坦で表面変化に乏しいものもあります。
大腸ポリープの主な症状
基本的に無症状ですが、硬い便が通る場所にあると擦れて出血し、血便の症状が現れたり便潜血検査陽性になったりすることがあります。
ただし、便潜血検査陰性でも大腸がんや大腸ポリープがないというわけではありません。大腸ポリープ発見のためには、自覚症状がない段階で大腸カメラ検査を受けることが不可欠です。
大腸ポリープの原因
遺伝子の異常によってポリープができ、がん化にはKras遺伝子やp53遺伝子などが関与しているとされています。ただし、ポリープ発生やがん化には年齢、家族歴も大きく関与しますが、食事・肥満・喫煙・飲酒などの要因も大きく関わっていると指摘されており、こうしたリスク要因によって遺伝子異常が起こると考えられています。
また、家族性大腸腺腫症という疾患では遺伝子異常によって大腸全域にポリープが多発し、早ければ30代にはがん化する可能性があることがわかっています。
大腸ポリープの治療
ポリープには平坦なものもあり、切除が適しているかどうかを正しく判断する必要があります。さらに、切除する場合は精緻に観察してポリープのサイズや形状、Pitという粘膜の模様などを把握した上で適した術式を選択し、遺残なく正確に切除する必要があります。
当院では高度な観察ができる内視鏡システムを使い、検査・切除の研鑽を積んだ医師による切除を行っています。 切除は、ポリープにかけたスネアというワイヤー状の器具を強く締めつけることで切除する「コールドポリペクトミー(Cold snare polypectomy/CSP)」と、スネアに高周波電流を流して焼き切る「ポリペクトミー(Hot snare polypectomy/HSP)」などがあります。
ポリペクトミーは高周波電流による熱が大腸壁下層に伝わってしまうことで術後の穿孔や出血といった合併症リスクが上昇してしまうことから、当院では安全性の高いコールドポリペクトミーを主に用いて切除しています。
大腸カメラ検査中に大腸ポリープが発見された場合、当院ではその場で大腸ポリープの内視鏡的切除を日帰り手術として行っています。サイズが大きい・太い茎がある・数が多いなど、別日に入院による切除が必要になることもまれにありますが、ほとんどの場合は入院の必要なく検査中の切除が可能です。なお、入院による切除が必要と判断された場合には連携している高度医療機関をご紹介しています。
大腸ポリープの対策・対処法
大腸がん予防につながる大腸ポリープ発見のためには、大腸ポリープ発症リスクが高くなる40歳を過ぎたら自覚症状がなくても大腸カメラ検査を受けることが不可欠です。 また、大腸ポリープはほとんどが無症状ですが、比較的早く血便の症状を起こすことがあります。
大腸がん検診として受けた便潜血検査陽性をきっかけに大腸カメラ検査で発見されることが多くなっていますので、血便があった場合だけでなく、便潜血検査陽性を指摘された場合も速やかに消化器内科を受診して大腸カメラ検査を受けてください。ただし血便がなく便潜血検査陰性でも大腸がんや大腸ポリープがあることは珍しくありませんので注意が必要です。
よくある質問
大腸ポリープのリスク要因にはどんなものがありますか?
大腸がんは50歳以上になるとリスクが高くなりますが、大腸ポリープは放置された時間が長くなるとがん化する可能性が高くなりますので、大腸ポリープの段階で発見するためには40歳以上になったら大腸カメラ検査を受けることをお勧めしています。また、大腸がんや大腸ポリープになった家族がいる、動物性脂肪・赤身肉(牛・豚・羊)・加工肉の過剰摂取、肥満、飲酒や喫煙もリスク要因となっており、あてはまる場合には早めの検査をお勧めしています。なお、慢性的な大腸の炎症を起こす疾患がある場合も、大腸がんの発症リスクが上昇するとされています。
大腸ポリープ切除は入院しないでも可能ですか?
切除による出血の可能性が高い場合や、ポリープの数・サイズ・形状などにより入院による切除が必要になるケースもまれにありますが、ほとんどの場合は検査中に日帰り手術として切除することが可能です。
他院で受けた大腸カメラ検査でポリープが発見されたのに切除されなかったのはどうしてでしょうか?
クリニックにより、大腸カメラ検査は行っても、観察のみで検査中の大腸ポリープ切除を行っていない場合があります。大腸カメラ検査を受ける場合には、検査中のポリープ切除に対応しているかを事前に確認しましょう。なお、ポリープのサイズや数、形状などによって切除には入院が必要と判断され、検査中の切除を行わないこともあります。いずれにしても切除可能な医療機関をご紹介されていると思いますので、早めに受診してください。
大腸とは
食べものが最後に通る臓器であり、右下腹部から肛門までとお腹の中を大きく回っています。結腸と直腸に大きく分けられ、結腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。大腸壁は、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層になっています。大腸の主な役割は水分の吸収であり、栄養の消化吸収はほとんど行われていません。
大腸がんとは
大腸にできるがんで、大腸全域にできますが肛門に近い直腸やS状結腸に発生することが全体の約7割にのぼるとされています。粘膜表面に発生し、時間をかけて下層に広がる浸潤を起こして筋層に及ぶと進行がんとなります。大腸壁の外に及ぶとお腹にがん細胞が広がる腹膜播種を起こし、リンパ液や血液などを介して転移を起こし、遠隔臓器に転移することもあります。
食生活が欧米化した日本では大腸がんの罹患者数やがんによる死亡者数が長年増加傾向にあり、現在は上位にあります。正常な粘膜から直接発生することもありますが、ほとんどの大腸がんは良性の大腸ポリープである腺腫から発生しますので、大腸ポリープの段階で内視鏡的切除を行うことで効果的な大腸がん予防が可能です。
また、大腸がんは大腸カメラ検査で早期発見と確定診断ができ、早期発見できれば内視鏡による切除で完治が期待できます。大腸ポリープや大腸がんはサイズが大きくなってはじめて自覚症状が現れることが多く、大腸ポリープや早期大腸がんを発見するためには自覚症状がない時期に大腸カメラ検査を受けることが不可欠です。大腸カメラ検査中に発見した大腸ポリープはその場で切除することも可能です。
大腸がんの原因
大腸がんのリスク要因には、動物性脂肪・赤身肉(牛・豚・羊)・加工肉の過剰摂取、肥満、飲酒や喫煙などがあり、欧米的な食生活はリスクが高いとされています。遺伝も関与すると考えられていますので、大腸がんや大腸ポリープになった家族がいる場合は早めに検査を受けることが重要です。
また、クローン病や潰瘍性大腸炎などで大腸に慢性的な炎症があると大腸がんの発症リスクが上昇するとされています。 効果的な予防や早期発見のためには、リスクに合わせた頻度で定期的に大腸カメラ検査を受けることが有効です。
大腸ポリープは時間をかけて大腸がん化を起こし、大腸がんも比較的ゆっくり進行しますので、リスクが上昇しはじめる40歳を超えたら大腸カメラ検査を受け、効果的な予防や早期発見につなげましょう。
大腸がんの症状
早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープは自覚症状に乏しく、進行してもはっきりとした症状を起こさないこともあります。大腸がんや大腸ポリープが肛門に近い部分にできた場合、硬い便で擦られて出血し、血便の症状を起こすことがあります。
また、がんやポリープがある程度大きくなると便の通過が妨げられて下痢や便秘、便が細くなる、残便感、膨満感、嘔吐などを起こすことがあります。慢性的な出血が続くと貧血によってめまいや頻脈、血圧低下などの症状を起こすこともあります。
便通異常は単なる体調不良と、血便は痔と誤解されることが多く、他の症状も幅広い消化器疾患と共通していますので受診が遅れることがありますが、こうした症状が続くようでしたら早めにご相談ください。
当院の大腸がん検査
問診で症状の内容、はじまった時期や経過、既往症や服用している薬、ライフスタイルなどについてうかがった上で、大腸カメラ検査を行います。大腸カメラ検査は、早期の大腸がん発見や確定診断、前がん病変の大腸ポリープ発見や切除が可能な唯一の検査です。
当院では、特殊光や画像処理、拡大などの高度な最新機能を搭載した内視鏡システムを導入して、微細な病変もスピーディに発見できるようにしています。特に特殊光による観察は通常の白色光では観察できない毛細血管分布を詳細に把握でき、活発な増殖のため周囲に毛細血管を集めるがん発見に有用であり、表面変化の乏しい微細な早期がん発見に大きく役立ちます。また、大腸カメラ検査中に発見された前がん病変の大腸ポリープは、形状や大きさなどを観察した上で最適な手法による日帰り手術として検査中に切除しています。
当院では、精度が高く楽に受けていただける検査を行っており、ウトウトしてる間に受けられる鎮静剤を用いた検査も可能です。さまざまな配慮を行っていますので、安心してご相談ください。
日帰り大腸ポリープ切除手術
前がん病変の大腸ポリープを切除することは、将来の大腸がん予防になります。
当院では、大腸カメラ検査中に発見した大腸ポリープは、日帰り手術としてその場で内視鏡的切除を行っています。別日の切除スケジュールをつくる必要がなく、検査・治療・予防が1度でできます。
また、事前の食事制限や下剤服用も1回です。 切除を行った場合、リカバリールームで30分程度お休みいただいた後に医師からの説明があり、その日のうちにご帰宅となり、入院の必要がありません。